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中国麺食紀行
中国麺食紀行
平成19年10月16日(火)11時45分、高松空港を中国・西安に向けたチャーター機が飛び立った。 平成20年5月から6月にかけて開催される「世界の麺フェスタinさぬき」のプロローグとして、また中国・陝西省からの訪問団招聘のための香川県観光協会主催により交流団「香川県麺交流の翼」である。
このツアーは西安市の青龍寺跡空海記念碑での献麺式、そして市内のホテルで中国・陝西省との麺交流など公式の行事を行いながら、敦煌・洛陽、太原、西安滞在の4コースに分けて麺食と観光も楽しもうという計画だ。参加者は101名であった。
私はこのツアーにさぬきうどん研究会会長の真部正敏氏、さぬきうどん協同組合顧問の香川政明氏(さぬきうどん研究会副会長、さぬき麺業(株)社長)らとともに世界の麺フェスタ実行委員会幹事として参加した。
我々麺業関係者は中国での麺交流を始めとした公式行事を行うために製麺に必要な道具類や食材の小麦粉やうどん製品類などたくさんの荷物を抱えての参加である。
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第1回「麺ツアースタート」「献麺式(青龍寺)」
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第2回「日中麺交流(西安市内ホテル)」「日中交流夕食会」
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第3回「麺食ツアー(太原コース)」「10月18日太原での昼食」「10月18日平遥での夕食」
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第4回「10月19日平遥城内での昼食」「10月19日太原での夕食」
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第5回「10月20日西安での昼食」「麺専門店街散策(10月20日西安市内)」
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第6回「旅の終わりに」
「麺ツアースタート」「献麺式(青龍寺)」
西安到着後早速麺食の開始である。西安市内の美食長廊「餃子宴」で夕食を取ったが、その種類の多さに感心した。
さすが麺をテーマにしたツアーである。食べた餃子の種類は次の18種類である。
【蒸し餃子】・・・豚肉と季節の野菜、豚肉と髪菜、クルミ、野菜と椎茸、茄子と筍、えび肉、鶏肉とラー油、アヒルの肉とごま、イカ、その他野、澄面の野菜、野菜とマシュルームと卵、くろぐあい、青豆と卵入りの14種類
【焼き餃子】・・・蓮蓉入りなど2種類
【水餃子】・・・豚肉と剥きえびと韮入り1種類
【しゃぶしゃぶ餃子】・・・1種類
平成19年10月17日9時から、交流団全員が参加する中で青龍寺空海記念碑の前で厳かに献麺式が行われた。
平成2年8月にさぬきうどん研究会真部会長など麺業関係者13名が初めて献麺式を行ってから17年目、第4回目の献麺式である。
ただ今回は101名の大団員による盛大な献麺式である。 まず香川県観光協会会長でこの交流団の団長である梅原利之氏の挨拶があり、それに引き続き梅原団長、真部会長、香川顧問により、さぬきうどん協同組合、香川県製粉製麺協同組合、小豆島手延素麺協同組合の香川県内の三麺業団体の製品が記念碑に献麺された。
そして善通寺の坂田知應師による読経と全員での拝礼で献麺式は終わった。
唐の都長安(現在西安)から空海が伝えたと言われる讃岐うどん、その末裔である香川県民の参加者全員が1200年前の空海の偉業に思いを深くしたひと時であった。
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「日中麺交流(西安市内ホテル)」「日中交流夕食会」
献麺式が終わると西安市内のシャングリラホテルに移動し、昼食時の2時間にわたる麺交流である。
麺交流は中国側から「岐山面(ツーシャンミェン)」(特一級面点師 秦桂芳女士)、「刀削面(ダォシャオミェン)」(陝西料理大会金メダリスト 鄭宏亮先生)、「拉面(ラーミェン)」(陝西料理大会金メダリスト 余鵬先生)の3種類の実技が披露された。
日本側はもちろん手打ち讃岐うどんを実演した。都合4種類の麺が一堂に会して、日本・中国の約2百人のお客様に食べ比べをしてもらおうという趣向である。
しかし我々にはホテル内での厨房機器の準備状況が事前に全く解らず、不安ながらの会場入りであった。
案の定、会場に入ってみると中国側の面点師達はスタンバイ体制であったが、我々讃岐うどん側は到着してからの準備である。その上会場内で我々に与えられた簡易厨房は、確かに手打ちうどんを打つ準備はして頂いていたが、2リットル程度の平釜が二つ並んでいるだけで、うどんを茹でるための機器は全く準備されていなかった。
主催者側からは150食のうどんを提供するように依頼されていた。メニューはきつねうどんである。香川社長と私と、それに同行していたさぬきうどん協同組合の横山さん、入谷製麺の入谷夫人の4人で準備にかかった。
早速10リットル程度の寸胴鍋を2つ準備してもらったが、一つはゆつに使ってしまうので茹で釜は一つで、150人前では機器が全く足りないのは明白であった。
香川社長は手打ちうどんの披露と説明、私は茹でを担当、女性軍は具材を乗せる担当で頑張ったが、所詮は機材不足であった。
途中でホテルの厨房の大釜を貸してもらうこととなり、大半はそれで茹でてなんとか所定の数量を提供する事ができた。
行列に並んでくれたお客様にはご迷惑をかけたが、「やっぱり讃岐うどんが一番美味い」と言ってくれる日本人もいてほっと胸をなで下ろした。ただ、後で同行のマスコミ担当者に聞くと、中国の方には味が少し口に合わないという声もあったとのことで、食文化の違いを再認識させられた。
今回の麺交流では、我々は自分の仕事をこなすのが精一杯で、中国の面点師の技を見る余裕もなかったが、会が終わってから特別に「龍髭面(ロンシュイミェン」の技を見せてもらうことができた。
後で真部会長に聞くと、これには強力粉を使っているらしいが、最後は髪の毛ほどの細さの麺になった。
ただ、この麺は茹でると溶けてしまうので、油で揚げるなど特別な料理に使われると言うことであった。
またその日の午後4時から2時間ほど、さぬきうどん研究会として、17年前から交流を続けている西安市のメンバーと座談会を行ったが、この概要は、真部会長にまとめていただく。
夕刻午後6時30分から梅原団長ほか訪問団101名と陝西省人民対外友好協会副会長の張宝文氏ほか面点師のグループも加わって賑やかに夕食交流会が行われた。
まず、張宝文氏から歓迎のご挨拶、そして梅原団長からは空海が取り持つ香川県と陝西省と親善交流の歴史、そして空海が伝えたうどん・麺をテーマとしたこれまでの麺交流の歴史、そして来春香川県開催の世界の麺フェアへの招致などの挨拶があった。
途中で雑伎団のショーも盛り込まれて盛大な夕食会となった。
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「麺食ツアー」(太原コース)「10月18日太原での昼食」「10月18日平遥での夕食」
10月18日から20日までは、4コースに分かれての観光ツアーである。ただ、ほとんどが敦煌か洛陽コースで、太原コースを選んだのはさぬきうどん研究会真部会長など麺関係者5名と一般の参加者2名(ご夫婦)の7名であった。
西安から太原まで北に向かって800km、飛行機で1時間ほどである。
真部会長や香川社長は13年前に麺交流団として訪れたことがあるとのことであった。
ただ、前回は中国の麺関係者の案内で家庭まで入っての麺交流であったが、今回は旅行社が企画した観光付きツアーである。食事は全て場所まで決められている。そんな条件のなかでどこまでディープな麺ツアーができるのかが問題で、それは我々とガイドとの交渉にかかっていた。
太原空港に出迎えに来てくれた現地のツアーガイドに、私は早速我々ツアーメンバーの構成とツアーの目的を説明した。ガイドは太原に在住の若い女性で日本語は決して上手いとは言えないが、非常に誠実で、私たちの要望をよく聞いてくれた。
10月18日到着後早速昼食である。太原市内の「康荘森林度假村」という店内が森の中にあるように設定された大きなレストランであった。
料理のメニューは旅行社によりすでに設定されているようであったので、太原でのこれからの料理は麺の種類を沢山食べられるメニューに変更するようガイドに依頼した。最初の店では早速ご飯と饅頭をカットし麺に変えてもらった。(中国では麺の字は今「面」と書く。)
ここで食べた麺は「刀削面(ダォシャオミェン)」「拉面(ラーミェン)」「紅面(ホゥミェン)」「猫耳朶(マオアルドゥオ)」の4種類である。
「刀削面」は麺の生地(硬い生地)を手で持って小さな刃物で削り跳ばしたものを茹でる、また「拉面」は手延べ麺で、柔らかい生地を何回も手で伸ばして細くしたもので、すでに西安に紹介した。
「猫耳朶」の材料は蕎麦というので、嗅ぐと確かに蕎麦の香りがした。ただ麺は猫の耳の形をした小指の先ほどの大きさの麺であった。作り方はまず生地を賽の目に切り、親指で麦わら帽子の上などで押しつぶすようにして作るとのことである。
これら作り方や原材料の異なる麺を、トマト風味や醤油風味、カレー風味など6種類のつゆを好みでかけながら食べるのである。
「紅面」の材料は高梁(コーリャン)で、麺の色はやや赤みがかっている。形は刀削面のような太い切り麺で、蒸籠で蒸して作るとのことである。
我々麺関係者は、西安での麺交流では讃岐うどんを提供することが手一杯で、ほとんど麺を味わうことができなかったので、初めて味わう中国の本格的な麺料理、「紅面」や「猫耳朶」を口にして皆大喜びであった。
太原の観光としては、「晋祠」(紀元前11世紀晋の祖、唐叔虞・・・周の地方長官を称えて作られた祠)と「喬家大院」(清代中期に栄えた大きな商家を一般公開した博物館・・・中国映画「赤い夢」のロケ地となり注目された。)を見学し、平遥に向かった。
太原から南に約100km、直線の広い道路だが路面は荒れていて車はよく揺れる。また道路の車幅一杯使って車同士が追越するので、左右にもよく揺れた。小さなマイクロバスで1時間半くらい田園風景の広がるなかを走って、平遥(古城)に着いた。
平遥での夕食はホテル麗澤苑国際酒店のレストランである。ここでもこちらの要望をいれてもらって3種類の麺を出してもらった。
「楸片(シュービェン)」「筱面佬佬佬(ユウミエンコロロ)」「抜蘭子(バッランス)」である。
「楸片」は麺の生地を大根摺りのような道具(抿節床)に押付けて削り板の下から出た小さな麺片を茹で、かけつゆや具材をかけて食べる麺である。
翌日、平遥の街を観光していて、リヤカーに道具一式を乗せて移動しながら、「楸片」を売り歩く夫婦に出会った。一食を作るのに1〜2分、その素早さにも感心した。価格は5元(80円)で近くの従業員達は毎日これを昼食としているとのことであった。我々も毎日昼食はうどんなので、香川の麺食文化と本当によく似ていると思った。
「筱面佬佬佬」の材料は筱麦とのことである。餃子の皮のような麺を蒸籠(せいろ)で蒸し、醤油味で炒めたもので、焼きうどんのような味であった。
また「抜蘭子」は小麦粉にジャガイモを混ぜた麺とのことであるが、麺を何かで小さく削り、炒めたものである。味は塩味であっさりしていた。
平遥は1500年の歴史のある街で、周辺の古寺双林寺と鎮国寺とともに世界文化遺産に指定されている有数の観光地の一つである。ただ日本では今一つなじみが薄く、観光客のほとんどは欧米人か中国人のようであった。
平遥の城壁(長さ6.4km)をくぐり一度城内に身を置くと、数百年以上前の中国(明、清時代)にタイムスリップしたような気分になるほど、町並みが当時のままに保存されている。差し詰め日本の高山か倉敷を大きくしたような感じであるが、人々の暮らしは相当田舎っぽく、これまた平遥ののどかな雰囲気を盛り上げているように思えた。
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「10月19日平遥城内での昼食」「10月19日太原での夕食」
平遥での昼食は街の中心部、市楼の前のレストラン「云錦城」である。また、「碗禿(ワンフォア)」、「紅面擦尖(ホウミェンツァージェン)」、「豆面抿尖(トウミェンミンチェ)」、「刀削面(タオシャオミェン)」の4種類の麺を出してもらった。
「碗禿(ワンフォア)」は蒸し麺で、きしめんを太く短くしたような形で、千切りにしたジャガイモをピーマンやにんじんと合わせて炒めたもので、焼きうどんみたいな味がした。
「紅面擦尖」紅面は前日に食べたが、ここのは色が赤いのは同じだが形が異なる。擦って小さくした麺だというが、形は「楸片」に似ていた。
「豆面抿尖」の材料は緑豆という。それをホーローチュアンでトコロテンのようにして作るらしい。
これらの麺を、トマトベースで唐辛子の利いたスープと豆腐の入った味噌味のスープで食べるのである。
小麦以外にも沢山の素材があるものだとみんな感心した。
平遥からまた北に100km、車で太原に帰り、夕食は「江南酒楼」である。ここでは「刀撥面(ダォポァミェン)」、「剔尖(ティチェン)」、「ノウタンホントンミェンと既に何度も出てきた「刀削面」、「拉面」の5種類である。
「刀撥面」は包丁の両端に持つ手があり、伸ばした面を両手で切る麺とのことである。
「剔尖」は麺生地を皿にのせ、竹のヘラのような物で削って作る麺のことである。
この二つのと刀削面、拉面の食べ方は、平遥の昼食とほぼ同じスープをぶっかけて食べる。
「ノウタンホントンミェン」は、この店の柱に大きく掲示されていたメニューで、日本で云えばワンタン麺のようなものであった。
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「10月20日西安での昼食」「麺専門店街散策」(10月20日西安市内)
太原を朝に立ち昼過ぎに西安の空港に着いた。昼食はその空港のレストラン「机場賓館」である。そこで出た麺は「酸湯面(サンタンミェン)」、「哨子面(ソーズミェン)、「炸醤面(ザージャンミェン)」、「油潑面(ヨーポーミェン)」である。ただ、麺線は全て拉面のようで、味の付け方が異なる4種類であった。従業員の説明によれば、これらの麺は陝西省の8種類の麺のうちの4種類ということであった。
「酸湯面」はつゆに酢が入ったかけ麺で、ネギ、卵焼きを薄く切ったものなどを浮かべたもので、あっさりとした味であった。
「哨子面」はトマト味のするかけ麺で、具材は「酸湯面」と同じであった。
「炸醤面」は肉味噌をぶっかけた麺で、どんぶりの底に青梗菜が入っていた。
「油潑面」は熱い油をさっと通した麺で、やはりどんぶりの底に青梗菜が入っていた。味は醤油味であったように思う。
西安最後の夕食には麺が無かったので、夕食後メンバーを誘って、南門近くの麺専門店街を見学に行った。数件が軒を並べているが、夜の10時を過ぎているのにどの店も賑わっている。我々はそのうち「褌帯面(クータイミェン)」、「バイタイミェン」、「手撕面(ショスミェン)」3店に入り、麺作りの実演を見学し、麺も試食してみた。価格は一杯5元(日本円で80円)前後であった。
「褌帯面」は、鉛筆の倍ほどの太さで20cm位の麺の生地を小さな麺棒で平たく伸ばし、両端を両手で持って何度か引っ張って2mくらいのベルトのような麺を作る。それを青梗菜と一緒に大釜に入れて2分程度で出来上がり、茹で湯と一緒に丼に盛り、つけ麺で食べるのである。味は醤油味で美味しい。
「バイタイミェン」は、麺作りのところは見られなかったが、きしめんのような釜あげの麺に酢の入ったつゆのかけ麺で、昼に食べた「酸湯面」とよく似ていた。
「手撕面」は、左手に麺の生地を握り、その端を右手の親指と人指し指で摘んで素早く50〜60センチ引っ張り延ばしながら、釜の中に投げ入れ、2分程度ゆでるとできあがる。注文が多いと3人くらいが釜を囲んで麺を延ばしては投げ入れる。その技は写真になかなか撮れないほど素早く、壮観であった。
麺はこれまた平たくきしめん風で、味付けは肉と野菜を炒めたもののぶっかけ麺で、味はピリ辛で結構美味しかった。
この店はチェーン店の本店とのことで、店主はこの手法の「面神」の称号をとっているとのこと。
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「旅の終わりに」
今回のツアーは、献麺式、麺交流、麺食ツアーと相当内容の濃いものであった。
特に麺食については、各食事や見学などで合計22種類の麺を食べたり見たりしたことになる。これだけ食べるとどれがどのような味だったのか忘れる程ディープな麺食ツアーであった。
中国の麺文化には三千年の歴史があり、麺の作り方、材料や調理の仕方で味の異なる麺が3000種類あると言われている。このツアーで私を含め参加者全員が中国麺文化の奥深さの一端に触れた思いで、肉体的には少々疲労を感じながらも心豊かに帰路についた。